学生の声
【科目名】 基幹科目「経済と社会」資本主義と農業-世界恐慌・ファシズム・農業問題- | 【対象学部】 医保歯薬工 |
【担当】 工藤 昭彦 (教養教育院) | 【開講時期】 1セメ:火1 |
歴史や社会に対する現代学生の見方
受講生170名余りに講義内容の時代背景を理解してもらうために、ビデオ『私達の昭和』第2巻「混乱編」-非常時の名の下に-(ユーキャン企画・発行)を鑑賞してもらい、感想を書いてもらった。以下は、「他の人がどんなことを考えたのか参考までに知りたい」という学生の要望を受け、レポート内容をいくつかのキーワードで分類してとりまとめ、受講学生に紹介したものである。歴史や社会に対する現代学生の関心を知る上で興味深い点もあり、参考になる。なお、HPで公表することについては受講生の了解を得ている。
■ビデオ『非常時の名のもとに』観賞の感想(H25.5.21)
【1.二.二六事件、軍部の台頭】-(軍の暴走、シビリアンコントロールの欠如、軍組織内の対立)
- 二.二六事件も軍部内の統制派と皇道派の対立もあったのだろう。
- 二.二六事件当時、事件の内容は民衆に伝えられていなかったとは思わなかった。
- 軍部の日本を守るためと言ってやったことが、結局、軍部が日本の国民を苦しめていたと感じた。
- 国民の意識が疑問に思うことなしに、軍部にコントロールされていく様子はある意味で不気味だなあと思った。
- 海軍は志願制だと知って驚いた。なぜ海軍は志願制だったのだろうか。
- 軍部は「国民の一致団結」をかかげているのに、政府に反発するのは矛盾している。
- 盧溝橋事件は本当はどっちが発砲したのだろう。私は日本側が発砲したと思う。戦争をおこすためにきっかけをつくろうとしていたと思う。
- 軍部内部の状況は、ほんとに哀れだと思った。自分が今まで培ってきた学歴、信頼、家柄、自信、価値観が覆されるのは想像できないほどつらいことだと思う。
- 農民を擁護したのが軍部であったことが、戦争を大きくしていったと思う。
- 二.二六事件は処分したのに、結局軍部が力を持つから怖い。
- 日中事変の盧溝橋事件で、一度、政府が休戦協定を結んでいたことを初めて知った。
- 軍が団結して何かやっている様子を映像として見ると、少し胸の高鳴りを感じ、当時の日本人の気持ちがわかった気がする。
- 戦争時の軍の力がいかに強かったかがよくわかった。
- 軍部と国とが対立しあうという状況が、現在の状況からは考えられないことで驚きだった。
- 盧溝橋事件の後、中国に侵攻することに反対した層がいたことには驚いた。
- 盧溝橋事件での日本の攻撃理由が、戊辰戦争における新政府軍の攻撃理由とかぶって見えた。
【2.戦争】-(恐怖、不安、理不尽、憤り、無慈悲)
- 戦争に向かう兵士への千人針はとても心強いと思う。
- 国のために命を捧げるというのは表向きだったと思う。
- 赤紙の話は、以前から知っていた。
- 入隊の様子を見ているとなんだか寒気がした。
- 当時の日本も、世界から見たら、今の北朝鮮のように思われていたのだろうか。
- 自分が徴兵の対象で、いつ赤紙がくるかわからない状況だったらと考えると、恐怖でとてもでないが、まともに生活できないと思った。
- 戦争のはじめはまだ、勢いや気力があって良いけれど、しだいに長期戦となっていくにつれて、食料問題・物資問題・人的問題など様々なことがでてきて、長期戦の大変さや不安の多さについて考えさせられた。
- 自分の意志に関わらず戦争に参加しなければならなかった人々が本当にかわいそうだと思った。
- 日本を止めることのできる存在がなかったことが最も恐ろしい。
- 当時日本の戦争に向けた動きはあまりに盲目的で、国家が正常に機能していたとは思えない。
- 実際はドロドロした戦場へ行くのに、兵隊になるのに盛大な見送りをするなど、そういう仕組みをつくるのは、結局は戦場へ行かない身分や地位の高い奴だと思う。
- 周りの勢いに流されて、戦争に突入していく国民の様子も本当に憤りを感じる。
- 戦争が始まってからの兵士不足を予備役の人から徴収するのは、いくら戦争に勝ちたいからと言っても無慈悲だと感じた。
- 「戦争」という行為のもつエネルギーは制御不可能であるほど強大なのだと考えられる。
- 日中戦争の頃の日本は、日露戦争で破ったソ連による攻撃を恐れていたとわかった。
- 思い描いていた人生が、一枚の紙によってメチャクチャにされる戦争は残酷だ。
- 出兵により残された者たちの苦労や悲しみが想像以上に深刻だった。
- 戦争、特に日中戦争が開始する際、政府内でも多くの意見があったことは意外だった。
- 戦争は人間性の喪失
- 軍隊の先輩のしごきによって、人間として生きている感覚がなくなってしまうことには驚いた。
- 軍部の思惑で始まった戦争で、一般の人々が兵として使われ、死を迎え、それをメディアを通じて正しいことだとすりこませていた当時の日本は本当にどうかと思う。
- ソ連などの他国の軍拡による挑発から、否応なく日本はその道へ進まざるをえなかったともいえると感じた。
- 迫る国難の文章が、一方的に中国を悪く言っており、あまりに偏った内容で恐ろしく思った。
- 世界に目を向けて見ると、日々戦争の恐怖におびえている人々は数多くいるのだと思う。
- メールなどもない時代で、慰問袋を兵士に送ることで、兵士の士気を上げるというシステムはなるほどと思った。
- 実際は政府内でも様々な意見があり、半強行的な部分があったのだと驚いた。
- 戦争の理由は中国側にあるという考え方には驚いた。
- ワシントン条約といった国際条約を破棄してまで軍備する必要があったのかと思った。
- 国力がそもそも少ないのに、なぜあんなに戦争を続けようとしたのかと思う。
- 「一触即発とはまさに日ソ関係のことでございます」ということが印象的だった。
【3.貧困・経済】-(貧困、不満、洗脳、便乗、戦争)
- 軍にとって、貧困は貧しい庶民を洗脳し、戦争へと向かわせるには適した機会であったのだと感じた。悲しいことだ。
- 代用品を考え出すアイデアはすごいと思う。
- 軍需産業により、経済を回復するということは、戦争がない限りその成長に限りがあるということで、すなわち軍部が政府の統制を離れ開戦へと進むのは不可避だったと思う。
- 現代も国の借金はどんどん膨れ上がっているが、この頃も国債を200億円以上発行していたことには驚いた。
- 軍の階級には、元の家柄などの身分は関係なく、特に貧しい生活をしてきた人々の意欲がとても高かったと考えられる。
- 昔の国益の第一を担う軍事産業は、純利益が高くても材料や雇用人材をむさぼる何ともハイリスクな産業だと思った。
- 国民の中でも苦しい生活をしている農民の不満をうまく取り入って国家転覆をたくらんだ軍部は、とても怖いとともに巧みな計画だと感じた。
【4.憲法】-(平和、憲法)
- 今後、もしも96条の憲法改正が行われ、議会で9条までも改変されたら、昔のような戦争の時代がくるかもしれないと考えると、このDVDは改めて今の政治政策を考えなければならないと身の引き締まる思いがした。
- 平和憲法は意義深いものだと思った。
【5.世相】-(利用される日本文化、日本人らしさ)
- 戦争がはじまると日本らしい文化が再び花開くというのがおもしろい。これも日本を統一するための手段なのか。
- なぜ登山に人気が出たのだろうか。
- 子供たちが軍隊ごっこなどをして遊んでいることには驚いた。
- 自由気ままに生きるだけで、西洋かぶれと言われるなんて・・・。
- 戦争で亡くなった兵士の家に表札が掲げられ、それがすばらしいとするような考えは本当におかしいと思った。
- 女性誌の表紙が戦争によって変化しているというのも驚いた。
- 軍歌を聞くと、高校の校歌(勇敢な水兵)を思い出す。よく今までこの歌が残っていたものだと驚くばかりだ。
- 子供の軍隊ごっこや入営を盛大に祝う様子などから国民全体が戦争を名誉なものとして受け入れていく様子が信じられなかった。
- 慰問袋についても少年の作文には胸をつかれた。しかしその背景にも、国民の精神を戦争へ向けて統一しようとする軍の意志が潜んでいたかと思うと、怖いものだと思った。
- 軍隊主義だった日本でも、女性はささやかな喜びを見つけてたくましく生きているのだなと感じた。
- 今で言うところのカルト教団のような宗教は流行しなかったのだろうか。(大本教、出口王仁三郎)
- 国のために、と考えられることを不思議に思う。
- 写真館も戦時色になったが、兵士と家族の複雑な思いを察すると心が痛んだ。
- 東京のそば屋さんの話には感動した。
- 写真館の人もとても複雑な思いで写真をとっていたかと思うと悲しい。
- 石油を使っていた自動車が木炭を使っている。そこまでして本当に戦争をする必要があったのだろうか。
- 写真館の印象が現在とは全く違っていた。
【6.世論・マスコミ】―(マスコミ、情報操作、世論、流行、刷り込み)
- いつの時代も国民は大なり小なりマスコミによって世論が形成されてしまう。報道の最低限のルールおよびマナーの習得を進めることが必要である。
- 情報操作はいつの時も怖いものだと思った。
- 人々を戦争に協力的にするために思想統制のようなものが行われている気がして、少し宗教的な感じを受ける。
- 戦争に対する国民の考え方の個人差はどのくらいあったのか、気になった。
- 相変らず軍のPR活動は巧みだなと思った。
- 式典などによって、国民が「神国日本」のイメージを植え付けられていくことが、何となく詳しいと感じた。
- 政策についての不満などを国民が持っていても、世間の流れに乗らなければならないという風潮を恐ろしいと感じた。
- 情報が正しく人々に伝えられないのは、なおさら軍部の思惑通りになってしまうので怖いことだと感じた。
- 本当に重要なことは、自分の頭を働かせ、ただただ与えられる情報をうのみにしてはいけないと感じた。
- 非常時と言って、国民の不安をあおることで、国民をマインドコントロールして、戦時体制へと導いているように見える。
- 時代の風潮には抵抗できないということを感じた。
- 現代でもそうだが、国家機関の情報操作に国民は非常に不安を感じる。
- 現れて間もないマスメディアが、良くも悪くも大きな影響を持っていたと思う。
- 世間の風潮や習慣による刷り込みは怖いと思った。
【7.映像を見ての感想】-(来るときは一気に来る、すき焼きは江戸時代から)
- 短編映画の中で、戦争のシーンや残った母子が映し出されるのとは反対に、陽気な音楽が流されているのがおかしな感覚だった。
- 今では特別な日にしか着ることのない和服を身につけている人がちらほらと見え、時代の差を感じた。
- 総力戦というのはこんなにも悲惨なんだと感じた。
- 同じ失敗は繰り返してほしくないと思った。
- 戦争の風潮は、来る時一気に来るものだと、動画を見て思った。恐ろしい。
- 白馬があまり早く走れそうな馬じゃなかった。
- 目的が戦争だということを忘れて、一致団結し、助け合い、それに充実感や達成感を感じるのは、複雑な思いがする。
- 徴兵された人々の人格が変わってしまうほどにいびられたり、屈辱的な仕打ちを受けていたことはあまり知らなかったのでゾッとした。
- 「ミンミンゼミ」の話にはとても驚いた。
- 政治家は自分が安全なところにいるのを良いことに、自分の嫌な事を他人に押し付けているように見える。
- 助け合いの精神は日本人のDNAに刻まれているのではないかと思った。
- 「無言の帰国」の映像を見たときは言葉を失った。
- 戦争ごっこブームというのは、とても衝撃的な映像だった。
- すき焼きみたいなのを食べている。その時期にもうすき焼きがあったのか。(すき焼きは江戸時代からあった。牛鍋は明治から)
- 建築学科の学生としては、ビデオの最初に出た建物に、天皇を国家のトップとして素晴らしい者として見せる構造上の工夫が何かないか調べてみたいと思った。
- 戦時中の生活に関する映像が、こんなにも残っていることに驚きを感じた。
- 戦争のために、国民全体が変わっていった様子は、本当にすごい映像だと思った。
- 理不尽がまかり通ってしまう戦争の魔力が恐ろしく感じられた。
- 今回の映像を見て、ゾッとしたというのが一番の印象だ。
- 自分の息子が生きて帰ってこれるかどうかすらわからない状況下で、きっと私なら気が狂ってしまうかもしれないと思った。
【8.現代との対比】-(あの時代の人が純粋、今に生まれてよかった、不況・領土問題あっても戦争はダメ)
- 日中戦争が始まる前は、経済的に苦しくても、誰もの顔には笑顔があり幸せであった。経済的にはよくてもあまり活気のない現代社会とは逆であることに気付いた。
- 鉄製品のない生活なんて、今の自分たちにとっては考えられないものだなと思いました。
- 中国や韓国が尖閣諸島や竹島などに上陸したとき怒りはないにしても不快感があるというのは、似たようなものがあると思った。
- 自由な行為は西洋かぶれとされ、政府に反するもののように扱われていたというのは、今とはずいぶんちがう。
- 北朝鮮の国民は戦争をしたいと考えが湧かないほど土地も志気も疲弊していると思われるので、当時よりもずっと対話での平和条約締結が簡単と考えられる。
- 今より昔の人の方が、純粋であるような気がした。
- 戦争時期に入った時の雑誌の絵やアナウンスの仕方などが北朝鮮と似ていると思った。
- 当時の日本の様子は言うまでもないが、明らかに現代の日本と比べて異常である。
- 子供が銃を持っている姿は、現代のアフリカの子供兵士に似ていたが、子供たちの表情は、まったく異なることが当たり前であるが、印象的だった。
- 当時の国民の多くと同様、無知なので、間違った方向に扇動されてしまいそうで恐れを抱いている。
- 私は豊かな時代に生まれてよかったと思う。
- 戦争の原因は中国側にありということを言って、国民の総意を戦争に向かわせようとしているのが、どこか現在の北朝鮮を思わせた。
- 不況からの脱出⇒軍需⇒戦争。この流れはいつの時代でもありうるから、今は気をつけるべき。
- 映像の中に、一瞬だけ、靖国神社が出てきていた。今も続く社会問題と関連している。
- 戦争の時代には、国全体が同じ方向に進んでいるような印象をうけるが、最近では個人個人で全く別の方向を見ているような感じがする。
- 民主党へ政権が移ったあの時の状況が、まさに軍に政権をあずけてしまった当時と重なると思った。
- 靖国参拝問題など、中国側の意見も少しわかった気がした。
- どうして現在では、国が総力をあげて節約や貯蓄ができないのだろうかと思った。
- 今の社会はすべて政治家に任せ、国民が頑張ろうとしていないのではないか。
- 「モダンライフ」にあこがれる当時の人々の気持ちは、常に流行に敏感でありたいという現代の女性とも共通するところがある。
- 毎回思うのだが、これが数十年前のことだとは、やはり信じられないように思えてしまう。
- 戦時中の生活の苦しさと、今の生活がどれだけ恵まれているかということを再認識した。
- こんなにも、今と50年ちょっと前の日本が違うものかと驚いた。
- 今の日本には、たとえ不況や領土問題があっても、戦争を起こしてほしくない。
- 平和な現代に生まれ、自分自身の人生を歩める幸せを享受しようと思った。
- 国全体で一つの目標にむかっていると、今の社会のひきこもりの問題は絶対にないだろうなと思った。
- 戦争のための献金は、平成に生まれた自分にとっては全く信じがたい。
- 当時の日本の戦争への向かいかたは現代のアフガンやイラクの戦争とは全く違っていた。
2013.6.25