教員の語る「教養教育」とは

教養教育とは?

総長特命教授 森田 康夫

 教養教育は英語のLiberal  Arts に対応する言葉であり、その起源は古代ギリシャ・ローマにあり、直訳すれば「自由民が持つべき技」となります。当時の社会は、奴隷などの上に市民と呼ばれる自由民がおり、Liberal Arts は社会のエリートである自由民ができなければならない技となります。今から1000年位前にヨーロッパでできた大学において、語学(文法、修辞、論理)、数学、天文、音楽および哲学からなる教養教育は、法学・医学・神学などの専門教育を受ける前に受けるべき教育として定着しました。さらに、近代になり大学が社会の人材育成機関としての機能を強め、工学や経済などの実学的分野の専門教育を始めるのと連動して、教養教育の内容は豊かになりました。
 大学では専門に関する教育行いますが、専門に関する知識・技能のみでは社会で十分に生かすことは出来ません。専門の社会の中での位置づけを知り、(1)コミュニケーション・スキル、数量的スキル、情報リテラシー、論理的思考力などの汎用的知識や、(2)自己管理力、チームワークとリーダーシップについての力、倫理観、社会的責任観、生涯学習力などの態度や志向性も必要ですし、(3)獲得した知識・技能などを総合的に活用し、新たな課題を解決する能力も必要です。これらの能力を育てるのが、教養教育の使命です。
 社会にある具体的な問題を解決するためには、専門についての知識・技能だけではなく、それ以外の学問についての知識が必要となることもよくあります。社会に出てから専門を変えることもあります。さらに、大学を卒業した人は、専門的な仕事を一生続ける一部の例外的な人を除くと、ある程度の年齢となると管理職に就きます。そうすると、上に書いたような汎用的能力、態度・志向性、問題解決力などが重要になります。
 教養教育は諸君の人間的な厚みを増し、専門的知識のみでは解決できない問題を解決するために役立ちます。

2012.8.6